アイワグループCEO 平川聖士
11月2日は台風並みの悪天候にもかかわらず、かねてから約束していました国宝拝見に伺いました。
それは遠州の古刹に鎮座しています。1000年ほど前にインドから渡ってきた一刀彫で、かの北条政子の枕本尊とのこと。両手に収まるほどの大きさでしたが、目が届かない所までしっかりと手を入れていました。両手で包むと「いにしえ」の職人の魂をも感じることができ、幸せでした。
本物は、なんといっても「空気」が違います。美術館にいっても、ただただ高額な絵だけでは感じることができません。その「空気」は人の顔つきをも変えます。それは、その空気の中にいるからこそ、その空気を感じたからこそ生まれた表情なのです。決して険しくなるだけではありません、なごみの表情(笑顔)にもなってしまうのです。
その「空気」はテニスにもあります。身体の連動でボールに向かうことができれば、仲間とのラリーにリズムやメロディーが湧いてきます。リズムは登山で例えると「気配」を感じることです。それが畏怖の念、畏敬の念になるのだとおもいます。
素敵なコートの空間には、しまった顔だけではなく、笑顔があります。本当の笑顔は、その空気が誘ってくれるのです。
「笑顔」も連動します。20年ぶりに復帰した生徒も、初めは強張った顔も、みるみる溶け出し、昔の「笑顔」が表れます。まさに「溶け出し」「表れる」連動は、そこにある「空気」がしてくれるのです。
手だけではなく、上半身だけではなく、筋肉だけではなく、しっかりと地面からの力を股関節まで伝え、変換し、フォロースルーしていく、「連動」する身心を築き上げていきましょう。
スクールを「教室」とするならば、プライベートレッスンは「実践」です。アイワテニスのプライベートレッスンは、そこまでテニスを感じていただけるように、スポーツ文化も、伝統工芸も、食文化も、常に育みながらスタッフみんなで護り続けています。
アイワテニスには「日本文化」に携わっている無形文化財の方も受講しています。その一人が唐桟織の齋藤氏です。彼が10年ぶりに復帰してきた時にはガタガタで驚きました。娘さんが五代目を継ぎ覚悟を決めて再び門をくぐってきたとのことでしたが、この身体では未来は創れないと本人も納得したのか、テニスに対峙する姿勢も急変しました。目の奥の職人としての輝きも蘇りつつあります。斎藤氏には、かのバーナード リーチ氏も、「美は人間を救いうるのか」の柳宗悦氏、人間国宝の濱田庄司氏、版画の棟方志功氏らも遥々訪ねてくるほど、その染、織には魅力があります。「魅力」とは人を引き付ける「空気」です。わたくしも唐桟織を作務衣に誂え、寒い時期に着ていますが2~3℃あったかく感じるのは、草木染、洗練された綿だけではなく、彼の取り組む姿勢から生まれてきたものと確信しております。
11月23日、12月8日のテニスツアーには他県からも、その「空気」を感じにやってきます。開始の前日から、その鼓動を感じます。まさに先月、穂高に登った時のような呼吸を感じます。心身の衰えは災いを生みます、呼吸をしましょう、そのリズムで頂にむかって登りましょう、そしてテニスをしましょう。アイワテニスは「空気」や「人」を連動し続けます。その「空気」を感じていただけるように。いただけますように。
2024年11月15日
日本文化を支える職人と、その職人が打った蕎麦と今日の空気を味わいながら・・・筆
(次回のコラムは1月17日を予定しております。)